このテーマだけは、必要になってから調べる時間がない。 搬送の依頼は亡くなった当日、式の内容は翌日には決めることになる。 比較の余地があるのは実質その前だけなので、事前に費目を知っていること自体が いちばん効く準備になる。だから先に並べておく。
初期値(会葬者30名)だと出ていく合計は259万円。香典と葬祭費を引いた 差し引きの負担は224万円。地域・宗派・お墓の有無で大きく変わるので、 とくに納骨・お墓の有無で100万円単位で動く。
このボードの考え方
「葬儀一式◯万円」というプラン価格が実態と合わないのは、費用が4つの別々の 出どころに分かれているから。ボードもその4列にした。
- 葬儀式そのもの — 搬送・安置、棺と遺影、式場と祭壇・装花、火葬料と霊柩車
- 宗教者へ — お布施、戒名・法名へのお布施、お車代。 葬儀社の見積書には載らない
- 会葬者数で動く — 通夜振る舞いと精進落とし、返礼品。1人あたり × 人数
- 葬儀のあとに続く — 法要、納骨・お墓、遺品整理
この試算での構成比は葬儀式33%・宗教者22%・あとに続く31%・人数ぶん8%・香典返し6%。 式そのものは3分の1でしかない。ここでいう総額は「葬儀費用」ではなく、 納骨・片付け・相続手続まで一度に載せた額なので、葬儀社の見積書とは範囲が違う。「葬儀一式◯万円」を見比べても総額が 見えてこないのは、これが理由。
見落としがちな費目
ただし網羅ではない。抜けはある。 読んでいて「うちだと◯◯もあるな」が浮かんだら、そっちのほうが大事。
金額は会葬者30名・仏式・新たに納骨先を用意するケースとして、葬儀のあとまで 広めに積み上げた一例(2026年8月時点)。平均額ではない。家族葬や直葬なら式まわりは 下がるが、火葬料のように人数に左右されにくい費用や、納骨・遺品整理のように 葬儀の規模とは別に発生する費用もある。
| 費目 | 目安 | なぜ漏れるか |
|---|---|---|
| お布施(読経) | 15〜50万円 | 葬儀社の見積書には載らない。金額が明示されないため相場が分からず、菩提寺に直接聞くか、葬儀社に地域の目安を尋ねることになる。通夜・葬儀・初七日でひとまとまり。 |
| 戒名・法名へのお布施 | 10〜100万円 | 位(信士・居士・院号など)で大きく変わる。宗派によって呼び方も考え方も違い(浄土真宗では「法名」)、明確な料金ではなくお布施として扱われることもある。総額に最も効きうるのに、事前に想定していないことが多い。 |
| 納骨・お墓 | 10〜200万円 | 葬儀本体より高くなりうる最大の項目。合祀型の永代供養なら10万円台からある一方、樹木葬はプランの幅が大きく、2026年の調査では平均71.7万円(納骨堂81.5万円、一般墓152.0万円)。既にお墓があっても納骨費用と彫刻料、年間管理料が続く。 |
| 火葬料 | 0〜10万円 | 自治体によって無料〜数万円と差が非常に大きい。住民でない場合は数倍になる。「葬儀一式」に含まれないことが多い。 |
| 搬送・安置とドライアイス | 4〜16万円 | 病院から数時間以内の移動を求められるため、選ぶ時間がないまま最初の業者に頼むことになりやすい。火葬場が混んでいると安置日数が延び、そのぶん自動的に増える。 |
| 通夜振る舞い・精進落とし | 1人 3,000〜8,000円 | 会葬者数が読めないまま人数を決めるので、余るか足りないかになりやすい。 |
| 返礼品・会葬御礼 | 1人 1,000〜3,000円 | 参列へのお礼で、香典へのお返しである香典返しとは別物。ただし香典返しを当日渡す「即日返し」にする場合は、後日のぶんと二重に数えないよう注意(ボードの「香典返しの割合」を下げて調整する)。 |
| 香典返し(後日) | 香典の3分の1〜半額 | 四十九日のあとに送る。香典を「収入」と考えていると、半分近くが後から出ていくことを見落とす。 |
| 四十九日・一周忌などの法要 | 1回 5〜20万円 | お布施、会場、会食、引き物。三回忌・七回忌と数年おきに続く。 |
| 遺品整理・住まいの片付け | 10〜80万円 | 賃貸なら退去期限があるため急がされる。持ち家なら空き家のまま固定資産税と管理費が続く。距離が遠いほど、通う交通費も含めて重くなる。 |
| お車代・御膳料・心付け | 1〜5万円 | 僧侶の送迎をしない場合のお車代、会食を辞退された場合の御膳料。寺院との関係や当日の対応によって必要になる。現金で用意することが多いので事前に確認を(新札を避ける作法もある)。施設職員への心付けは不要・禁止の斎場もある。 |
| 相続の手続き費用 | 5〜50万円 | 不動産の名義変更(登録免許税+司法書士報酬)や相続税の申告(税理士報酬)。相続登記は義務化されており、放置すると過料の対象になりうる。 |
| 葬祭費・埋葬料 | 3〜7万円(戻る) | 健康保険(協会けんぽ)なら埋葬料は原則5万円(全国健康保険協会の埋葬料(費)のページ)、国民健康保険の葬祭費は自治体ごとに違う(5万円〜7万円など)。申請しないと1円も出ないうえ、時効がある(協会けんぽは原則2年)。 |
金融機関が名義人の死亡を把握すると、相続の手続きが終わるまで口座の入出金が原則として制限される。 当座の支払いは遺族の手元資金から出す前提になる。仮払いの制度はあって、 預金額 × 1/3 × 自分の法定相続分までは家庭裁判所を通さずに引き出せる (ただし金融機関ごとに150万円が上限で、戸籍一式を揃える手間はかかる。民法909条の2。 法務省の相続法改正のページに 制度の説明がある)。 もうひとつ。相続税を計算するときは、火葬・埋葬・納骨、遺体の搬送、通夜、 寺院への読経料などは葬式費用として遺産総額から差し引ける場合がある。 一方で香典返し・墓石や墓地の購入・初七日などの法要は対象外。 このボードの列でいうと、差し引けるのは主に「葬儀式」と「宗教者へ」で、 「あとに続く」の大半は対象外になる。
金額より先に、誰がいつ立て替えるかの問題になる。
大きいものは上のボードに入れてある。抜けはまだあるはずなので、 「CalcAnyway で開く」から自分のぶんを足す。
条件を変えるとどう動くか
- 会葬者を30名から10名に減らす(家族葬) — 人数ぶんが14万円減って、 式場や祭壇も小さくできる。ただし香典も20万円減るので、 差し引きの負担はあまり変わらない。このボードの条件では、人数を減らすと支出も 香典も減るので、自己負担は支出額ほどには減らなかった。香典を辞退するか、 親族構成がどうかで結果は変わる。
- 戒名・法名の位を相談する — このボードで最も大きく動く1項目。 菩提寺との関係に関わるので金額だけでは決められないが、幅を知ったうえで 相談するのと知らずに任せるのとでは結果が違う。
- 納骨先を永代供養にする — 墓石を建てる場合と比べて100万円以上変わる。 年間管理料が不要なプランも多いが、納骨堂や個別安置期間のあるものは管理料がかかる契約もあるので確認する。ボードの「あとに続く 計」がどう動くか。
次に読む — 結婚式の費用。見積もりの外側が膨らむ構造は同じ。