活用例 · 学習 · 2026-09-26 更新

ドント方式の議席配分 — 得票から議席を割り振る

選挙の得票から議席を割り振る、ドント方式の計算です。 議席は整数なので、得票の割合どおりには分けられません。 たとえば10議席を4つの党で分けるとき、得票率 42% の党は、割合どおりなら 4.2議席です。 端数の配り方の決まりによって、同じ得票でも結果が変わります。 この例では、ドント方式なら 5・3・1・1、端数の大きい順に配る最大剰余法なら 4・3・2・1 になります。

ボード1

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この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

左の4枚は、10議席を得票率どおりに分けた数です。 A党は 42% なので 4.2、B党は 30% なので 3 になっています。 右の「議席」は4枚の合計で、10 に固定されています(鍵の印)。

「議席」カードの ⋯ から「整数のまま分ける」を押すと、合計 10 のまま、4枚とも整数になります。 もう一度 ⋯ を開くと「ドント方式で分ける」があり、押すと配分が変わります。 「最大剰余法に戻す」を押すと、元の配分に戻ります。 ボードは整数にする前の 4.2・3・1.6・1.2 を覚えていて、切り替えるたびにそこから配り直しています。

割合どおりでは、議席の数にならない

この例では、議席は10、党は4つです。得票率と、割合どおりの議席は次のとおりです。

得票率どおりに10議席を分けた数(ボード1の初期値)
党 得票率 割合どおりの議席
A党42%4.2
B党30%3
C党16%1.6
D党12%1.2
合計100%10

合計はちょうど 10 です。けれど、4.2議席という議席はありません。 ちょうど整数になっているのは B党の 3 だけで、ほかの3つには端数があります。

端数を切り捨てると、4 + 3 + 1 + 1 = 9議席で、1議席が残ります。 この1議席をどの党に配るかを決めるのが、議席配分の決まりです。 決まりは1つではなく、ここでは最大剰余法とドント方式の2つを比べます。

最大剰余法 — 端数の大きい順に配る

ボード1で「整数のまま分ける」を押すと、A 4・B 3・C 2・D 1 になります。 残った1議席は、端数がいちばん大きい C党(0.6)に配られています。

端数の大きい順に、残った1議席を配る
党 割合どおり 切り捨て 端数 結果
A党4.240.24
B党3303
C党1.610.62
D党1.210.21
合計109残り1議席10

この決め方を最大剰余法といいます。 「剰余」は余りのことで、ここでは切り捨てた端数を指します。 切り捨てたあと、残った議席を端数の大きい順に1つずつ配ります。

最大剰余法では、どの党の議席も、割合どおりの数を切り捨てた数か、それに 1 を加えた数になります。 そのため、割合どおりの数からのずれは、どの党も1議席より小さくなります。

ドント方式 — 得票を 1、2、3… で割り、大きい商から取る

同じボードで ⋯ を開き、「ドント方式で分ける」を押すと、A 5・B 3・C 1・D 1 になります。 最大剰余法と比べると、同じ得票なのに、C党が1議席少なく、A党が1議席多くなっています。

ドント方式は、端数を使いません。 各党の得票を 1、2、3… で順に割り、出てきた商を大きい順に10個数えます。 その10個の中に自分の党の商がいくつ入っているかが、その党の議席の数です。

ここでは、得票の合計を10万票として、A党 42,000票・B党 30,000票・C党 16,000票・D党 12,000票とします。 得票率は、ボード1と同じ 42%・30%・16%・12% です。

得票を 1〜5 で割った商(丸数字は大きい順の順位。10位まで取る)
割る数 A党 B党 C党 D党
÷142,000 ①30,000 ②16,000 ④12,000 ⑦
÷221,000 ③15,000 ⑤8,0006,000
÷314,000 ⑥10,000 ⑨約5,3334,000
÷410,500 ⑧7,5004,0003,000
÷58,400 ⑩6,0003,2002,400
議席5311

10番目は、A党の得票を 5 で割った 8,400 です。 11番目は、C党の得票を 2 で割った 8,000 です。 C党は、2議席目にわずかに届きませんでした。 最大剰余法ではこの議席を C党が取っていたので、2つの決め方は、この1議席で結果が分かれています。

この例で A党に5議席目が届いた理由も、この表から分かります。 A党は、42,000 を 5 で割っても、まだ 8,400 あります。 C党の 16,000 を 2 で割った 8,000 より、わずかに大きい値です。

区切りの票数で見ると — 合計が10になるまで下げる

ドント方式は、別の見方でも説明できます。 「1議席あたりの票数」を1つ決めて、各党の得票をその数で割り、端数を切り捨てます。 その合計がちょうど10議席になるように、1議席あたりの票数を調整するやり方です。 ボード2は、この計算をするボードです。

ボード2

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この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

左の列は4つの党の得票と、中ほどの「区切りの票数」です。 中央の列は、各党の得票を区切りの票数で割って、端数を切り捨てた議席です(floor は切り捨て)。 右の「議席の合計」は、4党の議席の合計です。 区切りの票数は、−・+ で 100票ずつ変えられます。

初期値の 10,000票は、得票の合計 10万票を 10議席で割った数です。 このときの議席は 4・3・1・1 で、合計は 9議席 です。 ボード1で端数を切り捨てたときと同じで、1議席足りません。

区切りの票数を下げていくと、8,500票まではまだ 9議席です。 8,400票にすると、A党が 42,000 ÷ 8,400 = 5 で5議席になり、合計が 10議席 になります。 このときの 5・3・1・1 は、ドント方式の結果と同じです。 8,000票まで下げると、C党が 16,000 ÷ 8,000 = 2 で2議席になり、合計は 11議席になります。

8,400 と 8,000 は、商の表の10番目と11番目です。 ある党の議席の数は、その党の商のうち、区切りの票数以上のものの個数と同じです。 そのため、区切りを10番目の商に合わせると、ちょうど上位10個の商を数えたことになります。

最大剰余法をこの見方で言うと、区切りを 10,000票に決めたまま切り捨て、残った1議席を端数で配る方法です。 ドント方式は、端数を見る代わりに、区切りのほうを下げて合計を合わせます。

日本の選挙では

日本の衆議院の比例代表では、この「得票を 1、2、3… で割り、大きい商から数える」やり方が、 公職選挙法の第95条の2 に書かれています。参議院の比例代表も、第95条の3 で同じやり方です。 条文には「ドント方式」という名前は出てこず、計算の手順が書かれています。 割る数は、1 からその党の名簿に載っている候補者の人数までです。 同じ値の商が並んで議席を決められないときは、選挙長がくじで決めると、それぞれの第2項に書かれています (公職選挙法(e-Gov法令検索))。

衆議院の比例代表は、全国を11のブロックに分けて選びます。 公職選挙法の別表第二では、ブロックの議員数は、四国の6人から近畿の28人までです。 ドント方式の計算は、ブロックごとに、そのブロックの議員数で行われます。

ブロックごとの議員数の決め方も、同じ形の計算です。 公職選挙法の第13条第7項では、各ブロックの人口をある数で割り、1未満の端数を切り上げた数を議員数とします。 割る数は、その合計が定数に合うように決めます。 ボード2の切り捨てを切り上げに変えた計算で、この方法はアダムズ方式と呼ばれています。

議席の配分方法には複数の方式があり、どの方式を採用するかは制度として定められています。 この記事では、それぞれの計算結果の違いを扱います。 この例では、ドント方式は最大剰余法と比べて、A党が1議席多く、C党が1議席少なくなります。

数字を変えて確かめる

ボード2で、区切りの票数を変えた結果です。得票は初期値のままです。

区切りの票数と議席(ボード2で実測)
区切りの票数 A党 B党 C党 D党 合計
10,000票43119
8,500票43119
8,400票531110
8,300票531110
8,000票532111
7,500票542112

区切りを下げていくと、商の表の上から順に、議席が1つずつ増えます。 7,500票で B党の4議席目が加わるのは、B党の得票を 4 で割った商が 7,500 だからです。

議席が5つなら

同じ得票で、議席を5つにした場合です。 ボード2で区切りを 15,000票にすると、議席は A 2・B 2・C 1・D 0 で、合計が5になります。 14,000票まで下げると6議席になるので、5議席のときのドント方式の結果はこの 2・2・1・0 です。

最大剰余法では、割合どおりの数が 2.1・1.5・0.8・0.6 になり、配分は A 2・B 1・C 1・D 1 です。 D党は、ドント方式では0議席、最大剰余法では1議席になります。 議席が少ないほど、1議席の重みが大きくなります。10議席なら1議席は全体の 10%、5議席なら 20% です。

なお、割合どおりの数をそれぞれ四捨五入すると 2・2・1・1 で、合計は 6 になり、5 に収まりません。 合計を決まった数にしたいときは、まず合計を決めて、そのあとで端数の配り方を決めることになります。

C党の得票を増やすと

ボード2で C党の得票を 17,000票にすると、区切り 8,400票では 11議席になります。 区切りを 8,500票にすると、議席は A 4・B 3・C 2・D 1 で、合計が10になります。 C党の得票を 2 で割った 8,500 が、A党の5番目の商 8,400 を上回ったためです。

C党の得票を 16,800票にすると、C党の 16,800 ÷ 2 と A党の 42,000 ÷ 5 が、どちらも 8,400 で並びます。 区切り 8,400票では 11議席、8,401票では 9議席で、ちょうど10議席になる区切りはありません。 10番目の議席を2つの党の商が取り合う形で、公職選挙法ではこのとき、くじで決めることになっています。

この計算で分かること、分からないこと

ボードが扱っているのは、決まった数の議席を、決まった得票で各党に分ける部分だけです。 実際の選挙では、党の中で誰が当選するかを名簿の順位などで決める段階が、このあとに続きます。 衆議院では、小選挙区との重複立候補もあります。 この記事の計算は「この決まりなら、この議席数になる」までで、実際の選挙結果を再現するものではありません。

合計を決まった数に保ったまま、全部を整数にする計算は、選挙のほかにもあります。 人数を班に分ける、座席を部署に割り当てる、などです。 どの場合も、端数をどう配るかによって結果が変わります。

次に読む — 四捨五入・切り上げ・切り捨て — 概数の求め方 1つの数を千の位や百の位までの概数にする方法と、必要なバスの台数は切り上げ、いっぱいになる箱の数は切り捨て、のように使う場面で決まることを扱っています。


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