左の列は、請求書や家計から拾う数字です。中央の列は、それを上から1行ずつ加えていった合計で、 「保険外の合計」までが、高額療養費では減らない費用です。 下の3枚は、保険が適用される医療費の部分です。総医療費から上限額と自己負担を出し、「負担の合計」に加えています。 右の列には、入院日数・休業日数と、保険外の費用の割合を置いています。
高額療養費は、医療費が高くなりすぎたときに、自己負担に上限をつける制度です。 この例(総医療費 100万円・10日入院・仕事に戻るまで20日)では、医療費の自己負担は 3割負担から 20.7万円少なくなり、9.3万円に抑えられます。 それでも負担の合計は 35.9万円で、そのうち 74.1%(約4分の3)は、この制度では減らない費用です。 平均額ではなく、個室に入った場合の一例です。
このボードは、自己負担額を厳密に出すためのものではありません。 高額療養費の上限は所得によって変わり、入院が月をまたぐと計算が分かれます。 年間の上限にあたる分は、いったん窓口で払ってから、あとで戻ってくることがあります。 ボードでは、そこまでは計算していません。この制度では減らない費用を並べて見るためのもので、金額は目安です。
このボードの考え方
入院費用は、保険が適用される部分と適用されない部分に分けると組み立てやすくなります。 ボードでは、適用されない部分を先に合計し、最後に適用される部分を加えています。
- 入院日数ぶん — 1日あたりの費用 × 入院日数です。この例の1日あたりは、差額ベッド代 10,000円・ 食事代 1,500円・病衣と日用品のレンタル 600円・テレビと冷蔵庫 500円(ここまで病院に払う分で 12,600円)に、 家族の交通費と駐車場代 1,500円を加えた 14,100円です。10日で 14.1万円になります。どれも高額療養費の対象外です
- 家族側 — 入院準備の買い物 1.5万円と、家事・育児の代替 3万円です。ここまでで 18.6万円です
- 収入減 — 1日の収入減 4,000円 × 休業日数 20日です。入院日数ではなく、ふだんどおり働けるようになるまでの日数で数えます。 ここまでを合計すると、保険外の費用は 26.6万円です
- 医療費の自己負担 — 総医療費(10割)100万円の3割負担に、高額療養費の月ごとの上限がかかります。 この例は年収約370〜770万円の区分(区分ウ)で、上限額は 85,800円 +(総医療費 − 286,000円)× 1% = 92,940円です。 ボードでは総医療費を万円で入れているので、式の中で 10000 を掛けて円に直しています。 3割負担のほうが小さいときは、3割負担がそのまま自己負担になります
- 負担の合計 — 保険外の費用 26.6万円に、医療費の自己負担 9.3万円を加えて 35.9万円です。 上限がかかるのは医療費の部分だけなので、残りの 74.1% は、この制度では減らない費用になります
2026年8月からの高額療養費
高額療養費は、2026年8月に見直されました。 主な区分で月の上限額が引き上げられています(すべての区分が上がったわけではなく、据え置きの区分もあります)。 あわせて、新しく「年間上限」(8月から翌年7月まで)ができました。 治療が長く続く人ほど負担が軽くなる仕組みなので、月ごとの上限だけでは全体が分かりません。
ボードの上限額は、年収約370〜770万円の区分の、2026年8月からの額で置いています。 自己負担の上限は所得区分によって大きく変わるので、ほかの区分では「上限額(区分ウ)」の式を置き換えると合わせられます。 所得区分の細分化は2027年8月からです。制度は今後も変わる可能性があるので、最新の内容は 厚生労働省の高額療養費のページで確認できます。
高額療養費の対象になるのは、公的医療保険が適用される医療費の自己負担部分です。 差額ベッド代・食事代・日用品・家族の交通費は、いずれも対象外です。
入院が決まったときに使える制度と手続き
入院が決まった時点で使える制度と手続きには、次のようなものがあります。
- 限度額適用認定証(またはマイナ保険証) — 窓口での支払いが最初から上限額で止まり、 立て替えが不要になります。使わずに、あとから高額療養費を請求する場合は、数か月ぶんを立て替えることになります
- 差額ベッドの扱い — 同意書に署名する前に、大部屋の空き状況と、病院の都合で個室になった場合の扱いを尋ねることができます
- 傷病手当金 — 会社員なら、標準報酬月額をもとにした日額の約3分の2が、 連続3日の待期のあと4日目から出ます (支給期間は通算1年6か月。全国健康保険協会の傷病手当金のページ)。 休業した期間が過ぎてから申請する後払いなので、休み始めてから入金までは間が空きます。 国民健康保険では傷病手当金は任意給付で(国民健康保険法第58条)、実施の有無や条件は保険者によって異なります
- 領収書と診断書 — 医療費控除は、税金が戻る制度ではなく、所得から差し引く制度で、受けるには確定申告が必要です。 民間保険の給付も、所定の請求が必要です。医療費控除を計算するときは、 高額療養費や入院給付金など、医療費を補塡する額を差し引きます (国税庁の医療費控除のページ)。 領収書と診断書は、どちらの手続きでも使います
この試算に追加できる費目
1日あたりの費用は、ボード2で費目に分けています。 この例では、病院に払う保険外の費用が 12,600円、家族の交通費が 1,500円で、1日あたり 14,100円です。