活用例 · お金 · 2026-09-26 更新

入院費用の計算例 — 医療費と保険外の費用を分けて試算

入院したときの費用を、高額療養費で自己負担に上限がある医療費と、この制度の対象にならない費用に分けて試算します。 下のボードは一例で、この例では医療費の自己負担は高額療養費によって 20.7万円少なくなり、9.3万円に抑えられます。 それでも負担の合計 35.9万円のうち 74.1%(約4分の3)は、差額ベッド代や食事代、収入減など、この制度では減らない費用です。 費目や金額は、お手元の請求書や状況に合わせて置き換えて使えます。

ボード1

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この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

左の列は、請求書や家計から拾う数字です。中央の列は、それを上から1行ずつ加えていった合計で、 「保険外の合計」までが、高額療養費では減らない費用です。 下の3枚は、保険が適用される医療費の部分です。総医療費から上限額と自己負担を出し、「負担の合計」に加えています。 右の列には、入院日数・休業日数と、保険外の費用の割合を置いています。

高額療養費は、医療費が高くなりすぎたときに、自己負担に上限をつける制度です。 この例(総医療費 100万円・10日入院・仕事に戻るまで20日)では、医療費の自己負担は 3割負担から 20.7万円少なくなり、9.3万円に抑えられます。 それでも負担の合計は 35.9万円で、そのうち 74.1%(約4分の3)は、この制度では減らない費用です。 平均額ではなく、個室に入った場合の一例です。

このボードは、自己負担額を厳密に出すためのものではありません。 高額療養費の上限は所得によって変わり、入院が月をまたぐと計算が分かれます。 年間の上限にあたる分は、いったん窓口で払ってから、あとで戻ってくることがあります。 ボードでは、そこまでは計算していません。この制度では減らない費用を並べて見るためのもので、金額は目安です。

このボードの考え方

入院費用は、保険が適用される部分と適用されない部分に分けると組み立てやすくなります。 ボードでは、適用されない部分を先に合計し、最後に適用される部分を加えています。

  1. 入院日数ぶん — 1日あたりの費用 × 入院日数です。この例の1日あたりは、差額ベッド代 10,000円・ 食事代 1,500円・病衣と日用品のレンタル 600円・テレビと冷蔵庫 500円(ここまで病院に払う分で 12,600円)に、 家族の交通費と駐車場代 1,500円を加えた 14,100円です。10日で 14.1万円になります。どれも高額療養費の対象外です
  2. 家族側 — 入院準備の買い物 1.5万円と、家事・育児の代替 3万円です。ここまでで 18.6万円です
  3. 収入減 — 1日の収入減 4,000円 × 休業日数 20日です。入院日数ではなく、ふだんどおり働けるようになるまでの日数で数えます。 ここまでを合計すると、保険外の費用は 26.6万円です
  4. 医療費の自己負担 — 総医療費(10割)100万円の3割負担に、高額療養費の月ごとの上限がかかります。 この例は年収約370〜770万円の区分(区分ウ)で、上限額は 85,800円 +(総医療費 − 286,000円)× 1% = 92,940円です。 ボードでは総医療費を万円で入れているので、式の中で 10000 を掛けて円に直しています。 3割負担のほうが小さいときは、3割負担がそのまま自己負担になります
  5. 負担の合計 — 保険外の費用 26.6万円に、医療費の自己負担 9.3万円を加えて 35.9万円です。 上限がかかるのは医療費の部分だけなので、残りの 74.1% は、この制度では減らない費用になります

2026年8月からの高額療養費

高額療養費は、2026年8月に見直されました。 主な区分で月の上限額が引き上げられています(すべての区分が上がったわけではなく、据え置きの区分もあります)。 あわせて、新しく「年間上限」(8月から翌年7月まで)ができました。 治療が長く続く人ほど負担が軽くなる仕組みなので、月ごとの上限だけでは全体が分かりません。

ボードの上限額は、年収約370〜770万円の区分の、2026年8月からの額で置いています。 自己負担の上限は所得区分によって大きく変わるので、ほかの区分では「上限額(区分ウ)」の式を置き換えると合わせられます。 所得区分の細分化は2027年8月からです。制度は今後も変わる可能性があるので、最新の内容は 厚生労働省の高額療養費のページで確認できます。

高額療養費の対象になるのは、公的医療保険が適用される医療費の自己負担部分です。 差額ベッド代・食事代・日用品・家族の交通費は、いずれも対象外です。

入院が決まったときに使える制度と手続き

入院が決まった時点で使える制度と手続きには、次のようなものがあります。

  1. 限度額適用認定証(またはマイナ保険証) — 窓口での支払いが最初から上限額で止まり、 立て替えが不要になります。使わずに、あとから高額療養費を請求する場合は、数か月ぶんを立て替えることになります
  2. 差額ベッドの扱い — 同意書に署名する前に、大部屋の空き状況と、病院の都合で個室になった場合の扱いを尋ねることができます
  3. 傷病手当金 — 会社員なら、標準報酬月額をもとにした日額の約3分の2が、 連続3日の待期のあと4日目から出ます (支給期間は通算1年6か月。全国健康保険協会の傷病手当金のページ)。 休業した期間が過ぎてから申請する後払いなので、休み始めてから入金までは間が空きます。 国民健康保険では傷病手当金は任意給付で(国民健康保険法第58条)、実施の有無や条件は保険者によって異なります
  4. 領収書と診断書 — 医療費控除は、税金が戻る制度ではなく、所得から差し引く制度で、受けるには確定申告が必要です。 民間保険の給付も、所定の請求が必要です。医療費控除を計算するときは、 高額療養費や入院給付金など、医療費を補塡する額を差し引きます (国税庁の医療費控除のページ)。 領収書と診断書は、どちらの手続きでも使います

この試算に追加できる費目

1日あたりの費用は、ボード2で費目に分けています。 この例では、病院に払う保険外の費用が 12,600円、家族の交通費が 1,500円で、1日あたり 14,100円です。

ボード2

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この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

ほかの費目を追加するときは、「CalcAnyway で開く」から開いて、カードを1枚増やし、金額を入れます。 そのカードを「病院の保険外」か「1日あたり」の式に加えると、合計に入ります。 その合計をボード1の「1日あたり」に入れれば、負担の合計と保険外の費用の割合まで反映されます。 付き添いの宿泊や診断書のように1回だけかかる費用は、ボード1の「入院準備の買い物」か「家事・育児の代替」に含めると、合計に入ります。

下の表は、この試算に追加できる費目の例です。網羅ではありません。 ご自身の状況に合わせて、必要な費目を追加できます。 金額は69歳以下・年収約370〜770万円の会社員が10日入院した場合の目安(2026年8月時点)です。

高額療養費の対象にならない費目(10日入院の目安)
費目 目安 メモ
差額ベッド代 1日 5,000〜20,000円
(10日で5〜20万円)
高額療養費の対象外で、そのまま自己負担になる、いちばん大きな費目です。患者が同意書に署名した場合にかかるもので、治療上の必要や病院の都合で個室に入った場合は、本来は請求されません。求められたときは、理由を尋ねることができます。上の幅は個室でよく見る範囲で、1人室の平均徴収額は1日8,625円です(令和6年8月1日現在。厚生労働省の報告資料(選定療養))。自己都合で個室に入った場合は、医療費控除の対象にもなりません(国税庁)。
月をまたいだ入院 上限が2か月ぶん 高額療養費は暦月ごとに計算します。月末から翌月初めにかけて入院すると、同じ日数でも上限の判定が2回に分かれます。どちらの月も上限に達するほど医療費がかかった場合は、上限額を2回ぶん負担します。予定手術なら、日程によって変わります。2026年8月からの年間上限は、その年に積み上がった額が上限に達したあとで還付される仕組みなので、この「2回ぶん」がその場で消えるわけではありません。
働けない期間の収入減 読めない(最大になりうる) 有給休暇が尽きれば無給になり、自営業なら売上が止まります。入院日数ではなく、ふだんどおり働けるようになるまでの期間でかかります。傷病手当金があるかどうか(会社員か自営業か)によって、影響が大きく違います。
入院時の食事代 1日 1,000〜2,000円 1食ごとに定額の自己負担です。これも高額療養費の対象外で、入院が長いほど積み上がります。
家族の交通費・駐車場代 1日 500〜3,000円 毎日面会に通うと積み上がります。遠方の病院に転院すると、さらに増えます。
病衣・タオルのレンタルセット 1日 400〜900円 病院が案内する「入院セット」です。任意ですが、洗濯を家族が引き受けられない場合は、使うことが多い費目です。
テレビカード・冷蔵庫 1日 200〜1,000円 1回は小さくても、入院が長いほど積み上がります。小銭やプリペイドカードが必要な病院もあります。
入院準備の買い物 5,000〜30,000円 パジャマ、下着、スリッパ、コップ、イヤホン。急な入院では、あとから家族が買いそろえることが多い費目です。
家事・育児・介護の代替 0〜15万円 家事代行、子どもの一時保育や延長保育、要介護の家族のショートステイ。入院した本人ではなく家庭の側でかかるので、医療費としては数えられません。
付き添いの宿泊・食事 0〜15万円 遠方の病院や、子ども・高齢者の付き添いでかかります。病院近くのホテル代や、外食が続く食費です。
先進医療・自由診療 読めない 公的保険の対象外で、全額が自己負担です。高額療養費の対象にもなりません。民間医療保険の先進医療特約は、この費用に対するものです。
診断書の作成料 5,000〜10,000円 民間保険の給付を請求するときにかかります。

民間の医療保険が必要かどうかは、ここでは判断しません。 ボード1の「保険外の合計」と、その中の収入減をご自身の数字で出すと、 貯蓄で吸収できる額かどうかを比べる材料になります。

条件を変えると、どう変わるか

ボードで、次のように変えることができます。

  • 大部屋にする — ボード2で差額ベッド代を 0 にすると、1日あたりは 4,100円です。 ボード1の「1日あたり」を 4,100円にすると、負担の合計は 35.9万円から 25.9万円に下がります。 それでも保険外の費用の割合は 74.1% から 64.1% までしか下がりません
  • 入院が20日に延びる — 入院日数を 20日、休業日数を 30日にすると、負担の合計は 54.0万円、保険外の費用の割合は 82.8% です。 医療費の自己負担は 9.3万円のままなので、入院が長引くほど、保険外の費用の割合が上がります。 総医療費が 150万円に増えても、上限額は 92,940円から 97,940円になるだけです
  • 自営業の場合 — 傷病手当金がないため、1日の収入減が大きくなります。 ふだんの1日の手取りを入れると、その差が分かります。この例で 12,000円にすると、 負担の合計は 51.9万円、保険外の費用の割合は 82.1% です
  • 入院が月をまたぐ — 同じ 100万円が2つの月に 50万円ずつ分かれると、 それぞれの月の上限額は 87,940円(8.8万円)になり、これが2回かかります
  • 総医療費が小さい — 総医療費を 20万円にすると、3割負担の 6万円が上限額 84,940円に届かないので、 高額療養費で減る額は 0 です。この場合は、3割負担がそのまま自己負担になります

次に読む — 出産費用の計算例 — 出ていくお金と給付を分けて自己負担を試算。出産にかかる費用と、出産育児一時金などの給付を分けて、自己負担を試算しています。


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