活用例 · 学習 · 2026-09-10 更新

M7とM9で、なにが1000倍ちがう?

マグニチュード7とマグニチュード9。数字は2しかちがわない。 それなのに、地震が出すエネルギーはちょうど1000倍ちがう。 2の差がなぜ1000倍になるのか。

M は、大きさそのものではない

先に答えを書く。M は地震の大きさをそのまま表した数ではない。 桁を数えるための目盛りだ。

ふつうの数なら、7と9の差は2だ。9は7より2だけ大きい。 M はそう読まない。M が1ふえるたびに、エネルギーが同じ倍率でかかる。 だから2ふえれば、その倍率が2回かかる。

その倍率がいくつなのかを、下のボードで確かめる。

CalcAnyway で開く ↗

この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

1ちがいは、どこで数えても同じ倍率

いまは小さいほうが7・大きいほうが9で、 1,000倍と出ている。

大きいほうを 8 にしてみてほしい。 31.622777倍に変わる。だいたい31.6倍だ。

つぎに小さいほうを 8、大きいほうを 9 にする。 また31.622777倍だ。 6と7でも、3と4でも、同じ数が出る。

1ちがいの倍率は、どこで数えても変わらない。 ここがふつうの数直線と決定的にちがう。 ふつうの目盛りなら「7から8」も「8から9」も同じだが、 M では同じ倍率になる。

ボードにはもう1枚、「桁のちがい」というカードがある。 出ている倍率が何桁ぶんかを数えたものだ。 1,000倍なら3桁、100倍なら2桁になる。 この列も入れて並べる。

M の差と、エネルギーの倍率(ボードで実測)
小さいほう 大きいほう M の差 エネルギーの倍率 桁のちがい
7701倍0桁
77.20.2約2倍0.3桁
77.50.5約5.6倍0.75桁
781約31.6倍1.5桁
891約31.6倍1.5桁
792ちょうど1,000倍3桁
693約31,623倍4.5桁
594ちょうど1,000,000倍6桁

差が0.2でもう約2倍になっているのに注目してほしい。 ニュースで「M7.2に修正されました」と聞くと小さな直しに見えるが、 エネルギーではになっている。

なぜ「1ふえると約32倍」なのか

ボードの式には 1.5 という数が入っている。 これは決まりごとで、M が1ふえるとエネルギーは10の1.5乗になる、 という取り決めだ。

10の1.5乗は、10 × √10 のこと。 √10 は約3.16なので、10 × 3.16 = 約31.6。 これが「1ちがいの倍率」の正体だ。

そして2ふえれば、31.6を2回かける。 31.6 × 31.6 = 約1000。 式で書けば 10の1.5乗を2回 = 10の3乗 = 1000 で、 約ではなくちょうど1000になる。

教科書やニュースでは「1ふえると約32倍」と言うことが多い。 31.6を丸めた言い方で、指しているものは同じだ。

桁で数えると、M が1ふえるごとに1.5桁

倍率の列は、1・約31.6・1,000・約31,623・1,000,000 と ばらばらに見える。桁の列はそうではない。

0 → 1.5 → 3 → 4.5 → 6M が1ふえるたびに、きっちり1.5ずつふえている。 倍率のほうがどれだけ大きく飛んでも、桁で数えれば足し算に戻る。

これが M という目盛りの正体だ。 M は「エネルギーを桁で数えて、1.5で割った数」だと言ってもいい。 倍率のかけ算が、桁の足し算になっている。

この「桁の数」には名前がある。対数だ。 ボードのカードにも log と書いてある。 むずかしい言葉に見えるが、やっていることは 「1,000は0が3つだから3」と数えるのと同じだ。

小さいほうを9、大きいほうを7にしてみてほしい。 倍率は0.001倍、桁のちがいは−3桁になる。 3桁ぶん下がった、と読める。 マイナスは壊れた印ではなく、向きが逆という意味だ。

震度とマグニチュードは、別のもの

ここを混ぜてしまう人が多い。2つはまったく別の数だ。

M は地震そのものの大きさを表す。 1つの地震に対して1つだけ決まる。

震度はその場所のゆれの強さを表す。 同じ地震でも、場所ごとにちがう。 震源から遠ければ震度は小さくなるが、M は変わらない

日本の震度は0から7までで、5と6は強・弱に分かれて全部で10段階ある。 「震度9」という言い方は無い。9があるのは M のほうだ。

つまずきやすいところ

マグニチュードで迷いやすいところ
つまずき なぜそうなるか ボードで確かめるには
2ちがうから2倍だと思う M は差ではなく桁を数える目盛り。1ふえるごとに倍率がかかる。 7と9で1,000倍。2倍にはどこにもならない。
1ちがいの倍率は場所によって変わると思う 取り決めが「1ふえたら10の1.5乗」なので、どこで数えても同じ 7と8も、8と9も、同じ31.622777倍。
0.1や0.2の差を小さいと思う 0.2でもう約2倍。M は小さく動いても倍率は大きく動く。 7と7.2で1.995262倍。ほぼ2倍。
大小を逆に入れてしまう 倍率が1より小さい数になる。壊れたのではなく、割り算の向きが逆。 小さいほうを9、大きいほうを7に。0.001倍=1000分の1、桁は−3。
倍率がばらばらなので規則が無いと思う ばらばらに見えるのは倍率のほうだけ。桁で数えると1.5ずつの足し算 M を1ずつ動かして、桁の欄が1.5ずつ動くのを見る。
エネルギーが1000倍なら被害も1000倍だと思う 被害を決めるのは深さ・距離・地盤・建物で、エネルギーだけではない。 ボードでは確かめられない。下の節を読んでほしい。

桁で考える場面は、地震だけではない

「差ではなく倍で並んでいるもの」は、身のまわりにいくつもある。 そういうものは桁の目盛りで見ると読みやすくなる。

1目盛りが「何倍」になっている目盛りの例
なに 1ふえると
地震のマグニチュードエネルギーが約31.6倍
音の大きさ(デシベル)10ふえると音のエネルギーが10倍
星の明るさ(等級)1等級暗くなると明るさが約2.5分の1(5等級で100分の1)
酸性・アルカリ性(pH)1ふえると水素イオンの濃さが10分の1

どれも「1ふえる」が「何倍」を意味している。 だからこの記事のボードは、地震以外にもそのまま使える。 1.5 のところを、その目盛りの決まりに変えるだけだ。

この見当は、どこまで本当か

この計算が出しているのはエネルギーの目安の倍率だけだ。

まず、M の決め方は1つではない。 日本の気象庁が発表する M と、世界で使われるモーメントマグニチュードは 計算のしかたがちがう。とても大きな地震では値がずれることがあり、 あとから数字が修正されるのはこのためだ。

そしてエネルギーが1000倍でも、被害が1000倍になるわけではない。 被害を決めるのは、震源の深さ・そこからの距離・地盤の固さ・建物のつくり、 そして津波が起きるかどうかだ。 M が小さくても、浅くて近ければ被害は大きくなる。

言えるのは「M が2ちがえば、出したエネルギーの目安は1000倍」まで。 そこから先は、この計算の外にある。

次に読むがい数(およその数)。こちらは同じ「桁」の話でも、どの位まで残すかを決める側の話。


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