活用例 · 学習 · 2026-09-06 更新

4.2議席は、どこへ行く?

10議席を4つの党で分ける。ある党の得票率は42%だった。 割合どおりなら4.2議席になるが、議席は割れない。 では、この 0.2 はどうするのか。 その決め方は1つではない。

まず、割合どおりに分けてみる

話を小さくする。議席は10。党は4つ。 票の数はもう出ているとして、得票率だけを見る。

得票率どおりに10議席を分けたら
得票率 割合どおりの議席
A党42%4.2
B党30%3.0
C党16%1.6
D党12%1.2
合計100%10.0

合計はちょうど10になる。ここまでは何の問題もない。 問題は4.2議席という席が存在しないことだ。 B党だけがちょうど3で済んでいて、あとの3つには端数が残っている。

端数を切り捨てると 4+3+1+1 で9議席にしかならない。 1つ余る。この余った1議席を誰に渡すか——それを決めるのが規則だ。 そして規則は1つではない。

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この画面でも数字を変更できます。ただしここでの変更は保存されません。 変更した状態を残したいときは、「CalcAnyway で開く」から開いて編集してください。

1つめの決め方 — 余りの大きい順に配る

上のボードには 4.2 / 3 / 1.6 / 1.2 が並んでいる。合計は10で、 この10は保たれている(「議席」カードに鍵の印が付いている)。

「議席」カードの から 「整数のまま分ける」を押してみてほしい。 合計10のまま、4枚とも整数になる。

余りの大きい順に、余った1議席を配る
割合どおり 切り捨て 端数 結果
A党4.240.24
B党3.030.03
C党1.610.6 ← いちばん大きい2
D党1.210.21
合計10.09余り1議席10

結果は A 4・B 3・C 2・D 1。 この決め方を最大剰余法という。 やっていることは名前ほど難しくない。 切り捨てて、余った分を端数の大きい順に1つずつ渡す。それだけだ。

素直な方法に見える。実際、割合からのずれはこの方法がいちばん小さくなる。 では、これで決まりでいいのだろうか。

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こちらは寄せ方がドント方式になっているボードです。 出発点の数(4.2 / 3 / 1.6 / 1.2)は上とまったく同じです。

2つめの決め方 — 割って、大きい商から取る

2枚目のボードは、出発点の数がさっきとまったく同じだ。 違うのは寄せ方の設定だけで、こちらはドント方式になっている。

同じように「議席」カードの から 「整数のまま分ける」を押してほしい。

A 5・B 3・C 1・D 1。 さっきは A 4・B 3・C 2・D 1 だった。 同じ票なのに、C党の議席が1つ減って、A党が1つ増えている。

同じ票、違う規則、違う議席
得票率 最大剰余法 ドント方式
A党42%45+1
B党30%33±0
C党16%21−1
D党12%11±0

ドント方式は何をしているのか

ドント方式は端数を見ない。各党の票を 1, 2, 3, … で順に割る。 出てきた商を大きい順に10個数えて、 その中に自分の商がいくつ入っているかが、その党の議席数になる。

得票率を 1, 2, 3, … で割った表(丸数字は大きい順の順位。10位まで取る)
割る数 A党 42 B党 30 C党 16 D党 12
÷142 ①30 ②16 ④12 ⑦
÷221 ③15 ⑤86
÷314 ⑥10 ⑨5.334
÷410.5 ⑧7.543
÷58.4 ⑩63.22.4
取った議席5311

10位は A党の 8.4 で終わる。11位はC党の 8 だった。 つまりC党はあと一歩で2議席目に届かなかった。 最大剰余法ではその席をC党が取っていたのだから、 2つの規則はまさにこの1議席を取り合っている

なぜ大きい党に有利になるのかも、この表を見ると分かる。 A党は42を5回も使えている(42, 21, 14, 10.5, 8.4)。 票が多いほど、割ったあとの商も長く大きいまま残る。 小さい党の商は早く小さくなって、上位10個から外れてしまう。

どちらが正しいのか

正しさで決まる話ではない。どちらも実際に使われている。

日本の衆議院の比例代表は、この「票を1, 2, 3, …で割って大きい商から取る」やり方を 法律で定めている(公職選挙法 第95条の2)。条文には「ドント方式」という言葉は出てこない。 手順そのものが書いてあるだけだ。参議院の比例代表も同じ形をとっている。

規則を選ぶことは、大きい党と小さい党のどちらに寄せるかを選ぶことでもある。 ドント方式は大きい党にやや有利で、そのぶん議会がまとまりやすい。 最大剰余法は得票率に近く、そのぶん小さい党が残りやすい。 どちらを取るかは、算数ではなく決めごとだ。

つまずきやすいところ

議席の分け方で迷いやすいところ
つまずき なぜそうなるか ボードで確かめるには
「票の割合で決まるはずだ」と思ってしまう 割合どおりの数はほとんど整数にならない。端数の行き先を決める規則が必ずいる。 2枚のボードは出発点がまったく同じ 4.2 / 3 / 1.6 / 1.2。それでも答えが違う。
ドント方式は端数を見ると思ってしまう ドント方式は割り算の商を並べるだけで、端数(小数部分)は一度も使わない。 上の割り算の表。C党の 1.6 という端数はどこにも出てこない。
「1議席くらい」と思ってしまう 10議席のうちの1議席は10%。議席が少ない選挙区ほど、規則の差が大きく効く。 C党は 16% の票で、規則しだいで 2議席にも1議席にもなる。
商が同じ値で並んだらどうなるか 実際に起こりうる。法律では、くじで決めると書いてある(公職選挙法 第95条の2 第2項)。 ボードは同点なら先に置いたカードが取る(何度やっても同じ答えになるように)。

この見当は、どこまで本当か

このボードが扱っているのは「決まった数の議席を、決まった割合で分ける」ところだけだ。 実際の選挙にはこの前に何段階もある。 衆議院なら全国が11のブロックに分かれていて、ブロックごとに議席数が違う。 小選挙区との重複立候補もある。

だからこの記事が言えるのは「この規則ならこの議席数になる」までで、 実際の選挙結果を再現するものではない。 ただし端数をどう配るかで結果が変わるという一点は、 規模が変わっても消えない。

寄り道 — 議席の話だけではない

「合計を保ったまま、全部を整数にする」場面は選挙以外にもある。 23人を3つの班に 35% / 40% / 25% で分けると 8.05 / 9.2 / 5.75 になるが、 人は割れない。座席・箱詰め・クラス分けも同じ形をしている。

そういうときは、まず合計を決めて、次に端数の配り方を決める。 四捨五入してから足すと合計が合わなくなるのは、この順番が逆だからだ。

次に読むがい数(およその数)。こちらは1つの数を丸める話。合計をそろえる必要がないぶん、規則はもっと単純になる。


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